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   気付けば僕の隣にはいつでも君がいて、季節は穏やかに流れていく。君がくれるたくさんの優しさに僕はいつも救われているんだ。
2024.11.23 Sat
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2014.10.04 Sat
何もかもが上手く流れる毎日なんてないと
ちゃんと知ってはいるけれど
やっぱり躓くばかりの日々につい、
溜息なんてついたりもする。
天気までがそんな憂鬱を後押ししてくれてしまっているようで
折しも宵闇の街に、雨。
ビニールの傘を開きながら
ねぇ君は今、何をしているんだろうなんて
そんなことを思ったりする僕は、どうにも情けないんだけれど。
でもやっぱりこんな時には
君のことを想いたくなる。
いつもの穏やかな微笑みや、真剣に本を読む横顔。
その手のひらのぬくもりや、最近の君のお気に入りの歌までも。
そうすると少しだけ、こころがほっこり感じるんだ。

君と僕は、似ているようでいても全く別の人間だから
見えるものも違うし、感じることも同じではない。
勿論ぶつかることもあるけれど
僕には無い視点からの君の言葉に、
なんというかひどく驚かされることもある。
例えばこんな雨の時、時々思い出す場面がある。
確かあれは、何時までもだらだらと続く長雨の頃
久方ぶりの晴れ間の散歩に
もう雨なんて降らなくてもいいのにと
その頃の微妙な心理状態も手伝って
思わず愚痴めいたことを零した僕に、君は言ったんだ。
『でも雨が降らなかったなら
 こんな綺麗な緑には出会えないでしょう?』
と。
そして、
細い指先で葉先をそっと弾いた。
水滴が撥ねて、軽やかな日差しの中に緑が眩しく煌めいて
『ね』
振り返った笑顔に、僕はあの時見惚れたんだ。
そう、雨上がりの晴天の眩しさには
雨が降らなければ出会えないのだと
気付かせてくれたのは君だった。

明日は君に会いに行こう。
天気予報は雨だけれど
きっと、雨の日だって、悪くは無いと
今の僕は知っているから。

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2014.09.27 Sat
君の隣で幾つも季節を通ってきたけれど
これからどれだけ時が経ったとしても
初めて指先に触れた時のあの想いを
僕はきっと忘れないでいると思う。

黙っていても君を感じて
好きなものも、苦手なものもそれなりに把握して
ときめき、そんな感情よりも
空気のような居心地の良さを感じている。
焦燥に似た熱情を、扱いあぐねていた頃と
今の想いのカタチは違っていても
僕なりに、間違いなく君のことが大切なんだ。
あまりに一緒にいるのが自然すぎて
時折大切なことを見失ってしまいそうにもなるけれど、
笑顔や、声、つまりは君の存在全てが
深いところで僕を包んでくれているということ
ただ近くにいてくれるだけで、呼吸が楽になるということ。
言葉にするのはなかなかに難しくて
何時だって上手く伝えられはしない。
でも
そう、僕は
いつまでも
君には此処に、いて欲しいんだ。

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2014.08.07 Thu
麦わら帽子が好きだったのだと
優しい目をして君は笑った。


表通りから一本入った喫茶店。
チェリー材のテーブルにはアイスコーヒーのグラス。
買い物に出掛けた途中の小休憩。
窓際の席から見える隣の公園の緑は
夕刻に差し掛かろうとする今も
強く陽光を跳ね返している。
やっぱり暑いね、なんて当たり前のことを言いながら
それでも子供の頃は蝉を追いかけたりしたのにと
苦笑混じりにちょっと零せば、
どうやらお転婆な子供だったらしい君は
確かに、と僕に同意をくれた後、
黄緑色のリボンのついた麦わら帽子が好きだったのだと
小さく笑った。
テーブル越しの僕を通り越して
どこか遠くに投げられたようなその眼差しに
どうしてか僕は懐かしいものに出会った気がして。


過ぎ去ってしまった風景を
遠い昔の記憶の欠片を
穏やかなままに思い返す時
きっと人は優しい顔になるんだね。


僕は何時か
こうして君と過ごす夏の景色を
そんな風に思い出すのだろうか。
そしてその時僕の隣には
変わらず君に、いて欲しいと願うのは
我が儘だったり、するのだろうか。
そんなことを今
氷の揺れるグラスを傾けながら
僕はそっと思っている。

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2014.07.26 Sat
電車を待つ短い時間に、ふと目に入った夏祭りのポスター。
賑やかな山車と花火の写真に誘われるように
僕は懐かしい夏を思い出した。
遠い夏
花火、風鈴、夜店の金魚
向日葵の黄色や麦わら帽子。
様々な音や色が蘇ってくる。
水の匂い、熱気をはらんだ夏草の香り。
落下傘の花火を追った、蛍の舞う水田のある田舎町は
もう遠い記憶の彼方にしかないけれど・・・。
『ね、』
脳裏に浮かぶあの頃に、ふと君の声が重なった。
所謂都会育ちの君は、自然の蛍なんて見たことがないと
いつかの夏に僕をズルイと言ったのだっけ。

幾つもの夏を君と重ねて来たことを
どういうわけか毎年君が新調する小さな風鈴の音が
そっと僕に教えてくれる。
今年のそれは朱と黒の金魚の泳ぐ優しい模様
軽やかな風の音は
もう僕にとっては当たり前の夏の窓辺の風景なんだ。

君がいて、僕がいて
季節は静かに巡り流れる。
穏やかな風に包まれた、
この手のひらに乗るほどの幸せを
僕は君と
大切に守って歩いていきたい。

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2014.07.21 Mon
何度見てもどうしたわけか心を惹かれる一枚の前で
少しばかり長く止まりすぎていたことに気付き
視線を巡らせてみれば、
まばらにある人影の向こうで、どうやら僕と同じように
違う絵の前で立ち止まっている君がいた。
もう何度も訪れているこの美術館は
それほど混雑することも無くて
僕たちがゆっくりと過ごすことが出来る定番の場所。
きっと季節ごとに一回は足を運んでいると思う。
お互いそう詳しいわけでも無いけれど
飽きること無く常設の絵画をのんびり眺め、
運が良ければ期間開催の特別展示に出会ったりする。
こうして展示を見ている間は
自然とそれぞれがそれぞれに動くから、
殆ど会話らしい会話なんてしない。
勿論、隣り合って立つこともあるけれど、
いつの間にかに静かに離れて、知らないうちにどこかで並んで、
また思う方へと進んで行く。
暫くの時間をそうして過ごして、僕たちは此処を楽しんでいる。
太陽が高さを増した頃に、
館内の喫茶店で一休みをするのも、いつものこと。
多くは無いメニューカードの並びの中から
君は大抵ミルクティー。僕も変わらずブレンドを。
君の好きな窓辺の席
ガラスの外、小径沿いの植え込みに白い花が咲いている。
その先に続く緑が陽光にキラリと光った。
足早に本格的な夏が訪れようとしていても
今日はそこまで気温が高くないようだから
小径を通って続く公園の方に足を伸ばしてみるのも悪くない。
ちょっとだけ街の音から離れた木々の間を
君とゆっくり歩こうか。
ぐるりと公園を一周するその道の
中程にある木陰のベンチを、僕は結構気に入っている。
君と並んで腰掛けて、暫し。
ざわりと聞こえる葉擦れの音とやわらかな君の声との間の静寂に
もしかしたら僕は
一番の寛ぎを感じるのかもしれない。

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