君のためにいったい何ができるのか
どれだけ時間を過ごしてきても答えは出ないのだけれど
何時だって僕の視線は君を求めてる。
例えば恋、だとか 愛、だとか
そんな言葉で簡単に括れるような感情では
おそらくきっとないのだろう。
さり気なく、それでも当たり前の存在として
確かに間違いなく傍らに在るもの。
そう、きっと
穏やかな日差しのように
前髪を掠める時折の風のように
やわらかに注ぐ月の光のように
僕の中に静かにしずかに積もってきて、
またこれからも緩やかに重ねていくのだろう。
想う気持ちはその時により色を変え、形を変えて
ゆっくりと育ってきて。
僅かな微笑みや、微かな指先のぬくもりが
僕に前を向かせてくれる。
ふと注がれる眼差しが
こころに熱を撒いていく。
昨日よりも今日、今日よりもきっと明日。
想いはきっと、深くなる。
誰かを想い、想われるということは
勿論とても大切なことであるのと同時に
真剣な想いであるからこそ、ひどく重くあるのが当たり前で
それが苦しいと感じる時も確かにある。
けれどもそんな気持ちを抱くことができる、
それはやはりきっと、ものすごく大切なこと。
『ね』
やわらかく紡がれる声と零れる穏やかな微笑みに
僕は何を返せるのだろうか。
君がそこに居てくれる、
それだけで僕は幸せな気持ちになるのだ。
何気ない風景の中に生まれるさりげない幸せ
大切なひとがいるという奇跡
いつだって守りたいと思うけれど
結局は君の大きな優しさに包み込まれているような
そんな穏やかな時間
君の存在だけが勿論僕の人生の全てでは無いけれど
もしも君がいなければきっと僕の時間は動かない。
でもそれが、依存、であるのかと考えれば
そういったものとは少し違うのだろう。
僕が僕でいるからこそ
僕は君に惹かれ続けるのかも知れない。
仕事帰りの小径の端で、密やかに咲く花を見つけたり、
ふと立ち寄った小さな書店の並びが思いのほか好みにぴったりはまっていたり
そんなどうでも良いようなことすら
君に伝えたくなる。
季節の変わりを知らせる空の色を見た時に、
不意に聞こえた小さな音色に遠く懐かしさを感じた折に
君はなんと言うだろうかと考える僕がいる。
「うん」
そしてそれを笑わずに
そう、こうしてカップを傾けながら、
小さなテーブルの向こうから優しい視線と微笑みが僕に注ぐ時、
僕は堪らなく暖かな気分になる。
些細なそんな事の積み重ね
それがどんどん大きくなって
今、ゆっくりと、確かに
僕は日々を過ごしている。
触れあう指先の向こうに繋がるものは何なのか
まだはっきりとは分からないけれど。
君がいて、僕がいて
緩やかに、穏やかに季節が巡る。