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   気付けば僕の隣にはいつでも君がいて、季節は穏やかに流れていく。君がくれるたくさんの優しさに僕はいつも救われているんだ。
2024.11.23 Sat
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2014.03.27 Thu

道路沿いの小さな空き地で
たんぽぽの黄色が季節の移りを教えてくれている。
そうだね
きっとほら、もう冬も終わり。

春が好きだと君は言う。
確かに
柔らかな日射しや、通りに零れ始める微かな花の香り、
それから新芽の瑞々しい色なんて
君にとってもよく似合う。
季節を切り取ったようなパステルカラーのカーディガンも
君の笑顔にぴったりで。
麗らかな陽光の中のその微笑みは
僕のこころまで優しくする。

でもね、
僕は知っているんだ。
夏になれば夏を、秋が来れば秋を、冬が巡れば冬を
君は好きだと言うんだってこと。

そんな君をこうして一番近くで見ていると
僕はどうしたってつられて笑顔になってしまうんだ。

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2014.03.24 Mon

懐かしい何かに出会った気がして
街中でふと足を止める。
人並みのざわめきが一瞬遠ざかって
つかみ所のない何かを追いかける僕の視線は
すぐに行き場を失ってしまうけれど。
胸に残る仄かな苦さの混じった暖かさに似たものを
扱いかねて空を見上げた。
春に近い夕暮れの風は陽の残りの色をのせて、
もう暫くで夜が下りる。
こんな何気ない夕暮れは
時折こうして唐突に、何となくの寂しい気分を僕に突きつける。
別に何があったわけでもない
例えば急に郷愁に駆られた、なんてそんなわけでもないし
気に掛かる何かもない。
可笑しいね
小さく嗤って僕はまた足を進める。

スクランブル交差点を斜めに渡って
駅に向かう通り沿いにフラワーショップ
店頭に並ぶのはもうすっかり春の花たちか。
赤や黄色に混ざって目を引かれたのは
薄オレンジのチューリップ。
そのやわらかい色に君の笑顔を思い出した。
・・・声が聴きたいな
ちょっと思えば、少し靴音が早くなる。
他愛のない話でいい、君の声を聴いていたい、なんて
十代の少年でもないんだけれど。
それでも
今日はできたら早めに仕事を切り上げて
帰ったらまず君に電話をしようと
僕は今思っている。

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2014.02.26 Wed

「虹」
と携帯電話から弾む声。
待ち合わせの公園までの、駅から続く道の途中
電車に乗っていた間に降っていた雨が、タイミング良く上がったばかり。
何となく顔を上げれば通りのすぐ向こうで君が手を振る。
空に架かるらしい橋は、僕の場所からでは建物に阻まれているらしく
その欠片すら、ここからは見えなくて。
きっと急いで駆けて来たのだ
君の鼻の頭はうっすらと赤く、
子供のような可愛らしさに、つい頬が緩む。
そんな僕を見て君は
小首を傾げて少し不満げな顔をしたけれど。

知っているだろうか。
どれだけ君の存在が、僕に優しさを教えてくれているのか
どれだけ僕の世界を広げてくれているのか
きっと僕は君と出会わなければ
そんな色々を知らずに過ごしていたのだろう。
勿論人並みに暮らしてはいただろうし
普通に年も重ねていただろうけれど
本当の意味での優しさやぬくもり、この世界の美しさに
気づけなかったと思うんだ。
信号が、青に変わる。
急ぎ足で交差点を越えて君に並べば
得意そうに示された指の先の空に
色が浮かんでいて。
「虹だね」
当たり前すぎる僕の言葉に
君はそれでも嬉しそうに笑った。
七色と言われるそれの、半ばほどしか分からなかったけれど
薄ぼんやりしたその橋を
僕はなんだかすごく、キレイだと思った。

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2014.02.20 Thu

あんまり寒くて冷たいと
こころまでが凝(こご)るから
今日の所は難しいことは後回しにして
暖かくして、ゆっくりおやすみ。
そうしてたっぷり眠ったら
明日の朝は早起きをして
買い物にでも出掛けようか。
カフェオレに良く合いそうな珈琲豆を探したら
もう暫くは寒いから、君が凍えてしまわないように
ふわりとやわらかそうな膝掛けと、
ちょっとだけ春色のセーターでも見てみよう。

心配しなくて大丈夫
夏よりも秋よりも
冬は、春に一番近いんだって
君が教えてくれたこと。
僕の予想では、明日は晴れ。
最近、僕の天気予報は結構正解率が高いんだって
勿論、分かっていると思うけれど。

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2014.02.17 Mon

この季節にしては珍しく、気温の上がった暖かな日。
とろりと甘い蜂蜜のような午後の日差しが
微かに眠気を誘うような。
買い物帰りの散歩道
遠回りをして公園を通るのは
天気が良い時の僕たちのお決まりのコース。
春を待つ桜の木の並ぶ緩やかな傾斜の坂道を曲がれば
やがて広場が現れる。
子供達が楽しげに駆け回る先で、大池の水面が陽光を受けている。
小径に沿って足を運べば
数羽の水鳥がゆるりと泳ぐのが見えて
池の畔、ベンチに座る主人の下で
黒い犬がぱたりと尻尾を動かして欠伸をした。

冬の陽だまりには、いつだって
ほっこり、がそっと置いてあると僕は思う。
きっと今までは気づけずにいた“何か”たち。
君と一緒にいることで、きっと
それらは穏やかな光を放ち始め
なんでもなかった一瞬が、かけがえのないものになる。
次の季節にはまだ少しだけ時間のある、冬の午後は短くて
こんな暖かさも、もう少しで消えてしまうのだろうけれど。
緩やかな日差しの中を子供達が駆けていく。
黄色や青の眼に鮮やかなマフラーが、枯れ色の公園に色を付ける。
不意にコースをそれて転がってきたボールを小さく投げ返した君が
「ありがとう」
無邪気な声に微笑み返す。
やわらかな眼差しに、なんだか僕まで嬉しくなった。
「?」
「・・・なんでもないよ」
僕の視線に気付いた君が、訝しげな色を浮かべたけれど
君を見ていると、それだけで
なんと言うか僕は、すごくほっとするんだって
照れくさいから
やっぱり言わない。

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